『愛の、がっこう。』原作はある？脚本家・井上由美子による完全オリジナル脚本を解説

フジテレビ系で2025年7月に放送開始されたドラマ『愛の、がっこう。』。

主演は木村文乃×ラウールのWキャストですが、原作の有無が多くの視聴者の関心を集めています。

本記事では、『愛の、がっこう。』が原作を持たない完全オリジナル脚本である背景と、その脚本を手がける井上由美子氏の制作意図や魅力を深掘りして解説します。

『愛の、がっこう。』に原作はあるのか？――完全オリジナル脚本の証明

2025年夏にスタートしたフジテレビ系ドラマ『愛の、がっこう。』。

主演に木村文乃とラウールという異色の組み合わせを迎えた本作には、「原作があるのか？」という疑問が多く寄せられています。

結論から言うと、『愛の、がっこう。』は原作なしの完全オリジナル脚本で制作された作品です。

本作の脚本を担当するのは、社会派ドラマの名手・井上由美子さん。

『白い巨塔』『昼顔』『緊急取調室』などを手がけた彼女が、“愛と教育、夜と正義”をテーマに真っ向から向き合った意欲作として、注目を集めています。

原作が存在しないことで、物語展開が予測できず、視聴者に毎回新たな驚きと考察の余白を与えてくれるのが、本作の大きな魅力です。

原作付きドラマでは、すでに結末を知っている視聴者も多いため、「どう描くか」が焦点になります。

しかし本作は、“何が起きるかわからない”という緊張感が継続し、視聴者と制作者が“物語を共に体験していく”感覚を味わえる構造になっています。

これは、オリジナル作品ならではの楽しみ方と言えるでしょう。

また、脚本が完全新作であることにより、時代や社会情勢を反映したリアルな描写も可能になります。

例えば、“ホストに通う女子高生”や“教師の職務と良心のはざま”といった題材も、現在の世相と照らし合わせながら描かれています。

そのため、視聴者はエンタメを楽しみながら、現代社会の問題にも触れることができるのです。

フジテレビの公式サイトでも「完全オリジナルドラマ」と明記されており、井上由美子の構想と筆力によって描かれる一話完結型の連続ドラマであることが強調されています。

原作がないからこそ、キャラクターたちが“いま”を生きているリアルさが際立ち、見る人の心に深く残るストーリーが展開されているのです。

原作なしのメリット：「予測できない展開」が生む緊張感

『愛の、がっこう。』が持つ最大の魅力の一つは、原作が存在しない完全オリジナルストーリーであることです。

この要素が、ドラマ全体に“次の展開が読めない”という緊張感と没入感を与えています。

特に、SNSでリアルタイムに視聴する層にとっては、“先の見えない驚き”が毎話ごとの大きな魅力となっているのです。

一般的に原作付きドラマは、原作の知識がある人にとっては結末が見えてしまいがちです。

しかし本作では、登場人物の心の動きや物語の構造すら予測不可能であり、視聴者は毎回“初見の感覚”を味わえます。

この“予測不能”こそが、作品との距離を縮め、感情移入を深める効果を生んでいるのです。

たとえば第1話では、女子高生がホストに恋をし、教師が直接ホストクラブに乗り込むという衝撃的な展開が描かれました。

そしてその後、カヲルというホストの“ある欠陥”が明らかになるという大きな伏線も登場し、物語はより複雑かつ深みを増していきます。

このように、「次に何が起こるかわからない」という期待と不安が、視聴者の関心を離さない要因となっているのです。

また、原作がないからこそ、俳優の演技や脚本家の意図がダイレクトに作品に反映されやすいという利点もあります。

演出においても、キャラクターの成長や感情の変化に合わせた映像表現が自由に設計されており、より繊細で大胆な物語づくりが可能となっています。

視聴者にとっては、「次が読めない」「常識が通じない」からこそ、一話ごとの展開に真剣に向き合いたくなるのです。

それがオリジナル脚本ならではの魅力であり、本作が注目されている大きな理由でもあります。

台本初出で話題：脚本家が意図した“先の読めない”ストーリー設計

『愛の、がっこう。』は、脚本の第一稿が出た時点から、制作陣・キャストの間で大きな話題となった作品です。

その理由は、登場人物の行動や結末が全く予想できない構成にありました。

視聴者だけでなく、出演者たち自身も「先の展開が読めず、毎話の台本を開くのが楽しみだった」と語っています。

脚本を手がけた井上由美子さんは、「予定調和にならない人間ドラマ」を目指していたと明かしています。

キャラクターの心の動きや感情のねじれを丁寧に描きながら、視聴者の予測を裏切る“展開の揺さぶり”を意識した構成が徹底されています。

そのため、物語には善悪の明確な答えがなく、見る人の価値観に問いを投げかける深みがあります。

また、複数の視点で語られる演出が、物語にさらなる奥行きを与えています。

例えば、教師としての正義感を貫こうとする愛実の視点と、夜の世界で生きるカヲルの視点が交錯することで、“どちらが正しいのか分からない”というモヤモヤが生まれるのです。

これにより、視聴者は物語を一方的に受け取るのではなく、自ら考える立場に置かれます。

井上氏は、あえて“安心して見られないドラマ”を狙ったとも語っており、脚本自体が「問いの連続」として構成されているのが本作の特長です。

これにより、エンタメ性と社会的メッセージ性が高次元で融合し、他のドラマとは一線を画した作品となっています。

台本段階で驚きを生んだ構成力こそが、『愛の、がっこう。』の骨太な魅力の源泉。

“読めない物語”に対する期待と緊張感が、視聴者を次回の放送へと自然と引き込んでいるのです。

脚本家・井上由美子とはどんな人物か？経歴と作風を紹介

『愛の、がっこう。』の物語を手がけるのは、日本のテレビドラマ界でも高く評価される脚本家・井上由美子さんです。

その名を聞いただけで、作品の完成度や深みへの期待が高まる人も多いのではないでしょうか。

ここでは、井上由美子さんの代表作や作風、そして本作に通じる魅力について紹介していきます。

井上由美子さんは、1961年生まれの脚本家。

1990年代から数多くのテレビドラマや映画の脚本を手がけており、『白い巨塔（2003年）』『昼顔（2014年）』『緊急取調室（2014年〜）』などのヒット作で知られています。

彼女の作品には、人間の本質に迫る深いテーマと、リアルで複雑な人間関係が常に描かれています。

井上さんの脚本の大きな特徴は、“正しさ”や“善悪”に明確な答えを出さない点にあります。

登場人物の一人ひとりに動機や葛藤があり、「誰もが正しくて、誰もが間違っている」という構造が、作品に深みとリアリティを生み出しています。

また、緻密に設計された会話劇と、サスペンス要素を含んだ構成にも定評があります。

『愛の、がっこう。』でもその作風は健在です。

女子高教師とホストという異色のキャラクターが対峙する物語は、社会の価値観や偏見、教育の在り方にまで踏み込んだ問題提起となっています。

これはまさに、井上由美子さんが得意とする“静かに刺す物語”のスタイルです。

長年にわたってヒューマンドラマの最前線を走ってきた井上由美子さんが、本作で描く“愛のかたち”と“教育の意味”に、今後も多くの注目が集まりそうです。

代表作：『白い巨塔』『昼顔』との共通点はどこに？

井上由美子さんの脚本作品といえば、『白い巨塔』（2003年版）や『昼顔～平日午後3時の恋人たち～』（2014年）が代表格です。

この2作品に共通しているのは、“社会的に正しいこと”と“人としての感情”がぶつかる構図です。

登場人物は常に葛藤し、自分の立場と欲望のあいだで揺れ動いていきます。

たとえば『白い巨塔』では、権力と医療倫理のはざまで苦悩する医師たちの姿が描かれ、視聴者は「何が正義か」を考えさせられました。

一方の『昼顔』では、禁断の恋に落ちてしまった主婦の揺れ動く心理が、世間の賛否を巻き起こしました。

どちらも、「理解できるけど許せない」、「正論では片付けられない」感情を描いており、それが井上作品の真骨頂とも言えるでしょう。

そして『愛の、がっこう。』にも、これらの作品と通じる構造があります。

ホストと教師、女子高生と夜の街という“分断された社会”をつなぐ構成は、まさに井上さんの得意領域です。

カヲルと愛実が交わす言葉には、立場を超えた人間同士の対話があり、そこに“許されざる感情”が絡んでいくことで、視聴者自身も揺さぶられる仕組みとなっています。

過去の名作と同じく、本作も明確な「答え」を出さずに問いかけを投げ続けるスタイル。

だからこそ、『愛の、がっこう。』は、井上由美子ファンだけでなく、社会派ドラマを好む視聴者にも深く刺さる作品となっているのです。

井上由美子の脚本の特徴：「人間心理の深掘り」と「倫理的葛藤」

井上由美子さんの脚本が視聴者の心をとらえる最大の理由は、人間の奥深い心理描写と、答えの出ない倫理的葛藤を描く巧みさにあります。

表面的な善悪ではなく、誰もが抱える矛盾や弱さに寄り添いながら、物語を組み立てていく手法は、リアルで共感を呼ぶ構造です。

そのため、井上作品の登場人物たちは、完璧ではないけれどどこか自分に重なる存在として視聴者の記憶に残ります。

例えば『昼顔』の不倫関係では、「やってはいけない」と分かっていながらも踏み出してしまう感情の揺れを、丁寧に、そして残酷なまでにリアルに描いていました。

また『緊急取調室』では、刑事としての職責と個人の感情がぶつかり合うシーンが多く、「正義とは何か？」という問いを視聴者に投げかけていました。

これらの作品では、事件や恋愛の“裏側”にある人間性がクローズアップされているのです。

『愛の、がっこう。』においても、この脚本手法は随所に発揮されています。

カヲルは知識も学歴もない“夜の人間”ですが、人の気持ちに敏感で、誰よりも不器用に愛を求めている存在として描かれます。

一方、愛実は教育の場に立ちながら、自分の正しさに迷い、「教える側」としてのプライドと葛藤に苦しんでいるのです。

井上さんの脚本は、登場人物が“正しさ”だけでは生きられない現実を、ドラマというフィクションの中に落とし込んでいます。

そして、視聴者自身にもその葛藤を疑似体験させることで、ただの娯楽にとどまらない深い余韻を生み出しているのです。

井上由美子が描く“教師とホスト”という異色の組み合わせ

『愛の、がっこう。』の最大の仕掛けの一つは、「高校教師」と「ホスト」という本来交わることのない立場の2人が出会い、関係を深めていくという設定です。

この大胆な組み合わせを成立させたのが、脚本家・井上由美子さんの物語設計の妙と言えるでしょう。

異なる価値観と環境を生きる2人を通して、「愛とは何か」「教育とは何か」という根源的な問いが浮かび上がってきます。

主人公の小川愛実は、生徒思いで真面目な高校教師。

一方で、もう一人の主人公・カヲルは、夜の世界でNo.1を目指す若きホストです。

このまったく異なる2人が出会うきっかけとなるのは、生徒・夏希がカヲルに入れ込んでいるという“問題行動”でした。

物語は、生徒を守ろうとする愛実が、ホストクラブに乗り込み、カヲルに念書を書かせるという衝撃的な場面から始まります。

しかしその対立から徐々に、互いの中にある“言葉にならない孤独”や“不器用な愛情”を見つけていく過程が描かれるのです。

これは単なる恋愛物語ではなく、相容れないと思われた世界が出会うことで起こる化学反応を、丁寧に紡いだ人間ドラマです。

井上由美子さんは、教育と夜の世界の“対比”を通じて、「善悪では割り切れない人間の本質」を描こうとしています。

教師が正義でホストが悪、という単純な二元論ではなく、それぞれに信じるものがあり、互いに触発されながら少しずつ変わっていく姿が魅力なのです。

この構造により、視聴者自身も「自分はどちらの立場に近いか」「どちらに共感できるか」と問いを突き付けられることになります。

異色の組み合わせを描くことによって、井上由美子作品ならではの深く、鋭い問いかけが際立つ本作。

まさに、“交わらないはずの2人”の出会いが、ドラマ全体を通して現代の価値観の多様性と、その再定義を促す重要なテーマとなっているのです。

なぜこの組み合わせ？…現代社会への問いとしての構造

「高校教師」と「ホスト」。

一見するとまったく交わることのないこの2つの職業を、なぜ井上由美子さんは物語の中核に据えたのでしょうか。

その背景には、現代社会が抱える“価値観の断絶”や“世代間の分断”に対する問いが隠されています。

教師は、「正しさ」や「ルール」を教える立場にあり、社会の枠組みを維持する側の象徴です。

一方で、ホストはその真逆に位置する存在とも言えます。

感情と欲望が交差する夜の世界で、“選ばれること”を仕事にしている職業であり、そこでは理屈よりも人間の“本音”が重視されます。

この対比は、現代社会における「表と裏」「建前と本音」というテーマに通じます。

学校という秩序の中では通じない価値観が、夜の世界では生き残るための武器になる。

つまり、何が正しくて、何が間違っているのかを一概には言えない時代を描いているのです。

また、この組み合わせはジェンダー観や階層構造、家庭環境の格差といった、複合的な社会課題にも波及しています。

たとえば、“勉強ができないけど人の心を読むのが得意”なホストと、“学歴があっても人と向き合うのが苦手”な教師というように、対照的な能力と弱点が丁寧に描かれています。

そこに共鳴や反発が生まれ、視聴者に“他者理解の難しさ”と“関係性の可能性”を投げかけてくるのです。

つまり、この“教師とホスト”という設定は、単なる奇をてらった演出ではありません。

社会の中で異なる場所に立つ2人が、どう対話し、影響を与え合うのかという「実験」でもあるのです。

それによって、視聴者自身の“固定観念”が問われる構造になっており、井上由美子作品らしい知的な刺激に満ちたドラマとなっています。

脚本上の人物設定から見える“対照と影響”の設計論

『愛の、がっこう。』では、キャラクター同士の“対照性”と“影響関係”が緻密に計算された脚本設計となっています。

特に主人公である教師・愛実とホスト・カヲルの描き分けが、その象徴です。

この構造は、視聴者が登場人物の変化に共感しやすくなる重要な要素です。

愛実は、知識も常識もあり、社会的には“正しい側”の人間です。

しかし同時に、感情を抑え、理性に頼りすぎるがゆえに人間関係がうまく築けないという弱点を抱えています。

一方のカヲルは、読み書きができないという社会的ハンディを背負いながらも、“人の心の機微”を本能的に読み取る才能を持っています。

この正反対の人物設定は、「社会に必要とされる能力」と「人間的な魅力」が必ずしも一致しないというテーマを浮き彫りにしています。

さらに、相手との関わりを通して、互いに欠けていた要素に気づき、変化していくプロセスが描かれることで、物語に深みが生まれています。

この“変化の兆し”が視聴者の心を動かす要因の一つなのです。

また、脚本上では周囲のキャラクターも巧妙に配置されています。

愛実の上司である教頭や、過去を知る同僚教師たちは、愛実の「社会的役割」を強化する存在として描かれています。

一方で、ホスト仲間や過去の施設関係者は、カヲルの「過去」や「本音」を浮かび上がらせる役割を果たしています。

こうしたキャラクター配置により、“人物同士の相互作用がドラマを動かしていく構造”が成立しており、井上由美子脚本の緻密さが際立っています。

視聴者はキャラクターの成長と揺れを見届ける中で、自分自身の価値観にも問いを突きつけられることでしょう。

完全オリジナル脚本による伏線と構成の妙

『愛の、がっこう。』が放送開始と同時に注目を集めた理由のひとつが、“完全オリジナル脚本”ならではの精緻な伏線と構成です。

原作のない物語だからこそ、脚本家の意図がダイレクトに反映され、視聴者にじわじわと響く展開が可能になります。

ここでは、その構造的な巧みさに迫ってみましょう。

物語の序盤で描かれる「念書を書くホスト」というシーン。

これは、教師という“正しさの象徴”である愛実と、ホストという“逸脱の象徴”であるカヲルの最初の接点であり、本作全体を貫く“交わらないはずの価値観が交差する”というテーマの象徴です。

その後、夏希の失踪という事件を起点に、物語は意外な方向へ進んでいきます。

また、カヲルが「読み書きができない」という設定も見逃せません。

これは単なる個性ではなく、教育とは何か、学びとは何か、という本作の主題に直結する重要な伏線となっています。

読めない・書けないからこそ、“言葉以外”で人とつながろうとする彼の姿に、「知識」よりも「理解」が必要とされる社会の姿が投影されています。

さらに、各話で描かれる生徒やホスト仲間たちのエピソードも、それぞれが愛実とカヲルの成長を促す“触媒”として機能しています。

登場するキャラクターたちは、単なるサブではなく、物語の根幹に関わる感情や行動の“連鎖”を引き起こす役割を担っているのです。

このように、『愛の、がっこう。』では、何気ないセリフや小さな行動にさえ意味が込められており、その一つひとつが後の展開に繋がっていきます。

視聴者が“あのときの出来事がここで効いてくる”という瞬間を味わえるのも、オリジナル脚本ならではの快感です。

井上由美子さんの脚本は、「違和感」や「疑問」を散りばめ、それを少しずつ回収していくことで、視聴者を深く物語の中へと誘っていく設計が施されています。

それはまさに、“答えのない問い”をどう描くかに挑戦した構成の妙と言えるでしょう。

第一話から見える伏線：読み書き不能という設定の持つ意味

『愛の、がっこう。』の第一話で最も視聴者の印象に残ったシーンのひとつが、カヲルが“字が書けない”という事実を明かす場面です。

この設定は、単なるキャラクターの個性にとどまらず、作品全体のテーマに深く関わる“重要な伏線”として描かれています。

物語が進むにつれて、その意味がじわじわと浮かび上がってきます。

カヲルが字を読めず、書けないという事実は、彼が社会制度の中でどれだけ“取りこぼされてきた存在”なのかを如実に物語っています。

学校で教えられる“学力”が身についていない＝教育の空白であり、これは教育制度の限界を象徴するメッセージでもあります。

この設定により、本作は「教育とは誰のためのものなのか？」という問いを投げかけてくるのです。

一方で、読み書きができないカヲルが、相手の感情を敏感に読み取り、人の“本音”を瞬時に察知する能力を持っている点も重要です。

これは、言葉では測れない“人間力”が、どれほど社会で求められているかを浮き彫りにします。

つまり、本作では「教育された知識」と「本能的な知恵」の両方を対比しながら、人の本質を問い直す構造が意図されているのです。

さらに、カヲルが念書を書くシーンで“文字を真似て書く”という描写は、彼が「理解していないまま社会のルールに従わされる存在」であることの象徴でもあります。

これは、現代社会における「形だけの同意」「内容を知らないままの承諾」といった問題にもつながる、非常に深い伏線といえるでしょう。

脚本家・井上由美子さんは、この設定を通じて、言葉や制度がすべてではないという現代的な視点を提示しています。

そしてその対照として、教師である愛実は“言葉の教育”を担う立場にいるわけです。

この二人の関係が物語を通してどう変化していくのか、読み書き不能という設定が今後どのような意味を持つのか、視聴者の興味を引き続ける大きな仕掛けとなっているのです。

今後の展開予想：「教育」と「欲望」の境界線が崩れる瞬間

『愛の、がっこう。』は、一見すると“教育”をテーマにした学園ドラマのように見えますが、物語が進むにつれ、教育の名のもとに隠された“欲望”や“依存”といった感情が浮き彫りになっていきます。

今後の展開では、教師とホスト、理性と感情、正義と愛欲という境界線が、より曖昧になっていくと予想されます。

その“揺らぎ”こそが、この物語の本質なのです。

特に注目すべきは、愛実が教師としての使命と、カヲルに対する個人的な感情のはざまで揺れ動く様子です。

彼女の中で“教えるべき存在”だったカヲルが、次第に“教えられる存在”へと転化していく構造は、視聴者にとっても大きな見どころでしょう。

この反転は、単なる恋愛感情ではなく、「人としての尊重」を問うテーマへとつながっていきます。

一方で、カヲルにとっての愛実は、“教師”という概念以上の存在になりつつあります。

読み書きができない自分に対して真正面から向き合ってくれた人物であり、彼にとっての“光”であり“救済”とも言える存在です。

その関係性が深まれば深まるほど、倫理と感情の間での葛藤が加速していくはずです。

また、生徒たちの“問題行動”も、単なる指導対象ではなく、大人たちの“歪んだ欲望”を映す鏡として機能しています。

教育の名のもとに行われる行為が、果たして誰のためなのか、本当に正しいのか、今後のストーリーではより掘り下げられることが期待されます。

このように、“教育”と“欲望”という、対極にあるようで実は地続きの概念が交錯することで、本作はただの学園ドラマにとどまらない深みを持った人間ドラマへと昇華していくのです。

視聴者は、その境界が崩れる瞬間に立ち会うことで、人間関係の本質や、自らの価値観の揺らぎに気づかされることでしょう。