2025年秋、Netflixで配信がスタートした『匿名の恋人たち』は、日韓共同制作による大人のロマンティック・コメディ。主演は13年ぶりにラブコメに挑む小栗旬。彼が演じるのは、異常な潔癖症を抱えるチョコレートショップの新代表・藤原壮亮(ふじわら そうすけ)。
ヒロインには韓国の人気俳優ハン・ヒョジュを迎え、繊細な心の傷を抱えた大人たちの再生と恋愛模様を描きます。
この記事では、小栗旬が演じる“潔癖御曹司”という複雑なキャラクターに焦点を当て、その魅力や役作り、撮影エピソードなどを深掘りしていきます。
- 小栗旬が演じる潔癖症の御曹司・藤原壮亮の魅力
- 『匿名の恋人たち』で描かれる“触れられない恋”の意味
- 脚本・演出に関わった小栗旬のこだわりと演技の深さ
小栗旬、ラブコメ主演は『リッチマン、プアウーマン』以来13年ぶり
2025年10月に配信されたNetflixオリジナルドラマ『匿名の恋人たち』で、小栗旬が13年ぶりにラブコメに主演復帰を果たしました。
彼のラブコメ主演といえば、2012年のフジテレビドラマ『リッチマン、プアウーマン』以来。
当時のクールでスマートな若手社長とは異なり、今回は「極度の潔癖症を抱えたチョコレート店の御曹司」という、より内面に葛藤を抱えたキャラクターに挑戦しています。
前作との違いと年齢を重ねた演技の進化
『リッチマン、プアウーマン』では若き天才起業家を演じ、恋に不器用ながらも情熱的な姿で視聴者を魅了しました。
しかし今回の『匿名の恋人たち』では、「恋は諦めたもの」として心を閉ざしていた大人の男が、再び愛と向き合う姿を繊細に演じています。
小栗旬本人も「恋愛ものを避けていたわけではなく、良い脚本のオファーがなかっただけ」と語っており、本作のプロットに惹かれたことが出演のきっかけだと明かしています。
ラブコメに戻ることへの決意と周囲の期待
小栗自身が脚本のローカライズにも深く関わり、日本語の表現やキャラクターの自然な言動に意見を出し合ったと語られています。
「ハン・ヒョジュさんが出演すると聞いて、ぜひ一緒にやりたいと思った」という発言からもわかるように、共演者とのケミストリーへの期待も高かったことがうかがえます。
演じる役への共感や丁寧な役作りが、ラブコメ復帰作としての完成度の高さを支えているのです。
演じるのは“人に触れられない”潔癖症の御曹司・藤原壮亮
小栗旬が演じる主人公・藤原壮亮(ふじわら そうすけ)は、東京・表参道の老舗チョコレート店「ル・ソベール」の御曹司。
一見するとエリート経営者のように見えますが、実は極度の潔癖症を抱えており、人との接触を徹底的に避けて生きてきた人物です。
「人に触れることができない」という障壁を抱えた彼が、恋や人間関係にどう向き合っていくのかが物語の大きなテーマのひとつです。
設定の背景とキャラクターの複雑さ
壮亮の潔癖症は単なる清潔志向ではなく、「自分自身が汚れている」という自己否定感からくる心理的な症状として描かれています。
彼は人との物理的な接触に強い恐怖を感じるだけでなく、過去の経験から深い心の傷を抱え、それが日常生活や恋愛に影響を及ぼしています。
このような内面の闇と葛藤を抱えたキャラクターを、繊細な表情と所作で表現する小栗旬の演技は、視聴者の共感を呼び起こします。
リアリティを追求した演技のこだわり
小栗はインタビューで、「壮亮は他人が汚いと感じているのではなく、自分が汚れているから触れられないと感じている」と述べています。
その繊細な心理を表現するために、手袋の装着、手洗いの頻度、距離感など細部にこだわって演じたと語っています。
また、脚本の初期段階からディスカッションに参加し、セリフやキャラクターの行動に違和感がないよう調整を加えるなど、役への強いこだわりを見せました。
このようなリアリティの追求が、藤原壮亮というキャラクターをより現実味ある存在へと昇華させています。
藤原壮亮というキャラクターに込めた思い
藤原壮亮は、ただの“潔癖御曹司”ではなく、現代社会を生きる私たちが直面している「心の壁」や「人との距離感」の象徴として描かれています。
小栗旬はこのキャラクターを通して、「人と関わることの怖さ」と「それでもつながりたいという本能的な欲求」の両面を伝えようとしています。
不器用ながらも少しずつ心を開いていく姿に、多くの視聴者が自分自身を重ねることでしょう。
壮亮の成長を通して描かれる人間ドラマ
物語序盤の壮亮は、清潔で整ったルーティンの中で孤独を抱えながら生きています。
しかし、ヒロイン・ハナとの出会いや社員たちとの交流を通して、“触れられない自分”から脱皮しようともがく姿が丁寧に描かれていきます。
彼の成長の過程は、視聴者にとって“他人との関わりをどう受け入れるか”を考えるきっかけとなります。
ラブストーリーの枠にとどまらないメッセージ性
小栗旬は、「藤原壮亮という役は、自分を守るために距離を取ることを選んだ人」と語っています。
その孤独と静かな葛藤が、恋という形で少しずつ溶かされていくのが、本作最大の見どころでもあります。
単なる“恋のときめき”ではなく、人生を立て直す再生の物語としての深みを持つのが、藤原壮亮というキャラクターの魅力です。
“触れられない男”が恋をする意味とは?
『匿名の恋人たち』の物語は、人に触れられない男・藤原壮亮と、目を見て話せない女・ユン・ハナの出会いから始まります。
お互いに“普通の恋愛”ができない事情を抱える2人が、少しずつ心の壁を乗り越えていく様子は、現代人の「不器用な愛し方」を象徴しているかのようです。
「触れられない男が恋をする」こと自体が、非常にドラマティックなテーマとして展開されています。
ハナとの出会いがもたらす変化
壮亮の前に現れたのは、目を見て人と話すことができない韓国人ショコラティエ、ユン・ハナ。
彼女もまた、過去の出来事により人と心から向き合うことができずにいます。
「触れることができない男」と「見つめられない女」という対照的な2人が出会うことで、どちらも少しずつ変わっていく関係性が丁寧に描かれます。
その変化の過程が、物語全体に優しい温度と余白を与えているのです。
視線と触覚による感情表現
このドラマでは、手をつなぐ、抱きしめるといった一般的なラブシーンよりも、“視線”や“手の動き”といった非言語的な演技が非常に多く使われています。
とくに、壮亮が初めてハナの手に触れようとするシーンは、一瞬の静寂と緊張の中に、感情のうねりが凝縮されているようです。
このように、身体的な距離感を保ちながらも心の距離が縮まっていく描写は、本作が“新しいラブストーリー”と称される理由のひとつでしょう。
脚本会議にも参加!小栗旬が作品に込めたリアリティ
『匿名の恋人たち』の制作にあたり、小栗旬は主演俳優でありながら脚本会議にも積極的に参加しています。
演じるだけにとどまらず、キャラクターの言動やセリフ、物語のトーンにまで深く関わったことで、より自然で説得力のあるドラマ世界が構築されました。
「台本に対して、演じ手としてだけではなく、観る側の目線も大切にした」と語る小栗の姿勢から、作品への深い愛情が感じられます。
主演としての意見が反映されたポイント
たとえば、壮亮が初めてハナと距離を縮める場面のセリフには、小栗自身の提案が採用されています。
「このキャラクターなら、こうは言わないと思う」という直感を大切に、脚本家や監督と細かくディスカッションを重ねたそうです。
その結果、セリフや動作のひとつひとつが登場人物の背景とつながり、作品全体に一貫したリアリティが宿っています。
キャラクターの言葉遣いにも注目
小栗は「壮亮という人物は、必要以上に感情を表に出さない分、言葉の選び方が重要になる」と語っています。
そのため、脚本の中でも壮亮の台詞は、感情を説明しすぎず、余白のある言葉が多く使われています。
こうした言葉の間や沈黙を大切にすることで、“心の声”がにじみ出るような表現が可能になっています。
主演・ハン・ヒョジュとの初共演は「心強かった」
『匿名の恋人たち』で小栗旬とW主演を務めるのは、韓国のトップ女優ハン・ヒョジュ。
彼女は『トンイ』『W-君と僕の世界-』などで知られ、日本でも人気の高い実力派俳優です。
そんな彼女との共演について、小栗は「最初からすごく安心感があった」と語り、撮影現場では互いの演技に刺激を受け合ったと明かしています。
国境を越えた化学反応
日韓共同制作である本作では、文化や言語の違いを超えた自然な交流と感情のやり取りが求められました。
小栗は「ヒョジュさんの目の芝居がとにかく素晴らしくて、こっちも嘘がつけない緊張感が常にあった」と語っています。
彼女の繊細な感情表現と安定した演技力が、藤原壮亮というキャラクターの内面をより引き出してくれたとも述べています。
撮影中の印象的なエピソード
2人が初めて本格的に共演するシーンは、「ハナが誤って壮亮に触れてしまう場面」。
このシーンは作品の大きなターニングポイントであり、2人の心の距離が一気に動き出す瞬間でもあります。
緊張感とやさしさが入り混じる絶妙な間合いのやりとりは、2人の実力と信頼関係があってこそ生まれたものです。
撮影後、小栗は「ヒョジュさんが相手だからこそ、あの表現が成立した」と語っており、この共演がドラマの完成度を高める大きな要素となっていることがわかります。
チョコレートの香りに包まれた現場エピソード
『匿名の恋人たち』の舞台は、表参道にある老舗高級チョコレート店「ル・ソベール」。
この設定に合わせて、撮影現場には実際に本物のチョコレートが常に用意され、甘い香りが漂っていたといいます。
視覚と嗅覚の両方から没入できるようなリアルな空間づくりが、キャストの感情表現にも良い影響を与えました。
ショコラティエ役への準備とリサーチ
小栗旬は御曹司でありながら、ショコラティエの技術も持ち合わせる藤原壮亮を演じるにあたり、プロのショコラティエから徹底的な指導を受けました。
実際のチョコレート製造工程や、テンパリングの手さばきなどを練習し、道具の持ち方や姿勢にまでこだわって撮影に臨んだそうです。
その甲斐あって、ドラマの中で描かれるチョコ作りのシーンは非常に本格的で、スイーツ好きや料理好きの視聴者からも高評価を得ています。
本物のチョコを使ったシーンの裏側
特に印象的なのは、壮亮とハナが初めて“共同でチョコを作る”シーン。
ここでは実際のチョコレートが使用され、テイクごとに作り直す必要があったため、非常にコストと手間がかかる撮影だったといいます。
小栗は「チョコの温度と気泡、照明の影響など、料理シーンが一番神経を使った」と語っており、映像の美しさとリアリティの両立にこだわったプロ意識がうかがえます。
こうした緻密な現場づくりが、観る者の五感に訴えかける豊かなドラマ体験を支えているのです。
潔癖症を演じる上での葛藤と工夫
藤原壮亮というキャラクターにおいて、最大の特徴が「人に触れられない」という潔癖症です。
この症状は病的なまでに徹底しており、手袋を常に装着し、人との距離を保つことを習慣としています。
そんなキャラクターを自然に、かつリアルに演じるために、小栗旬は細部にわたる工夫と役作りを行いました。
手袋や仕草で伝える“不安”と“壁”
まずこだわったのは手袋をつけるタイミングと外すタイミング。
小栗は「手袋を外す動作に意味を持たせることで、壮亮の心の変化を無言のうちに伝えることができる」と語っています。
また、目線や呼吸の使い方にも注意を払い、「誰かに近づかれるときの“微かな身じろぎ”だけで恐怖心を表現する」など、感情の揺れを“見せないことで見せる”という演技を追求しました。
感情表現を制限された中での挑戦
潔癖症という設定は、通常のラブストーリーで用いられるボディタッチやハグといった感情表現を封じるものでもあります。
そのため、セリフや表情、所作だけで心の動きを伝える高度な演技力が求められました。
小栗は「接触がないからこそ、逆にそれを“望む気持ち”がより伝わるように意識した」と語っており、「触れられない」ことが“恋愛の切なさ”を際立たせる要素になっていることがわかります。
このような制約の中でこそ光る演技力が、小栗旬の真骨頂とも言えるでしょう。
“藤原壮亮”は今を生きる人の象徴
『匿名の恋人たち』の主人公・藤原壮亮は、単なるドラマのキャラクターではなく、現代社会を生きる多くの人が抱える「人間関係への不安」や「孤独感」の象徴とも言えます。
潔癖症という形で表現される彼の心の壁は、過剰なストレス社会、SNS疲れ、他人との距離感に悩む現代人に深く共鳴します。
小栗旬もインタビューで「壮亮は、まさに“今”の空気を吸っている人物だと思う」と語っており、時代性を意識したキャラクターであることがうかがえます。
現代人の孤独と心のバリア
清潔さへの執着や、人に頼れない生き方は、誰かに迷惑をかけないように生きてきた結果の“自己防衛”でもあります。
こうした“心のバリア”を張ってしまう理由に共感できる視聴者は少なくないでしょう。
そしてそのバリアが、恋愛や人間関係の可能性を自ら閉ざしてしまうという悲しみもまた、本作を通じて描かれる重要なテーマです。
不完全さを受け入れることの大切さ
藤原壮亮がハナと向き合い、少しずつ自分の弱さやトラウマと向き合っていく姿は、「完璧でなくても愛されていい」「不完全なままでも誰かとつながっていい」というメッセージを強く放っています。
小栗は「壮亮のように“触れられないまま、誰かに触れたい”と思っている人は多いと思う。だからこそ、彼の再生の物語を丁寧に演じたかった」と語っています。
この役を通じて、小栗旬が伝えたかったのは、“傷つきながらも人と関わろうとする勇気”の美しさだったのかもしれません。
小栗旬が語る「この作品を通して伝えたいこと」
『匿名の恋人たち』で主演を務めた小栗旬は、この作品について「人は誰でも、誰かに知られずに抱えている想いや傷がある」と語っています。
それを受け入れ、互いに尊重し合える関係の大切さを、壮亮という役を通じて丁寧に表現したいと考えていたようです。
恋愛という枠組みを越えて、“人と人との関わり”そのものに対する優しい視点が、この作品の根底に流れています。
自分をさらけ出せる関係の尊さ
小栗はインタビューで、「壮亮はずっと、触れられること=傷つくことだと思って生きてきた。でも、触れられることで“癒される”こともある」と語っています。
自分を守るために距離をとってきた人が、誰かに心を許し、ありのままを受け入れてもらえる経験の尊さが、壮亮の変化に込められています。
それは同時に、「人に頼ってもいい」「弱さを見せてもいい」という、現代人へのエールでもあるのです。
“匿名の恋”が私たちに問いかけるもの
ドラマのタイトルである『匿名の恋人たち』には、「名前や肩書きを越えた、本当の自分でつながる愛の形」という意味が込められています。
ネットやSNSで表面的な繋がりが増える今だからこそ、“匿名でも、本音で愛し合える関係”がどれほど貴重かを問いかけているのです。
小栗旬は「この作品が、誰かが誰かを深く知ろうとすることの美しさを思い出させてくれたら嬉しい」と締めくくっています。
その想いが、視聴者の心にもそっと届く、静かで力強いラブストーリーとなっています。
- 小栗旬が13年ぶりにラブコメ主演で復帰
- “人に触れられない潔癖症”という難役に挑戦
- 脚本会議にも参加し、作品に深く関与
- ハン・ヒョジュとの国境を越えた共演が話題
- 触れられない男と目を見られない女の繊細な恋愛
- チョコレートが象徴する癒しとつながりの物語
- “匿名の恋”が問いかける現代的な愛のかたち
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